A.情報とは 1.情報とよりよい意思決定 よりよい意思決定  私たちは,日々なんらかの問題に直面している。ストレスに感じることもあ るが ,それを解決することで生きていける。 したがつて,生きていることは問題 解決の連続でもあるが ,それを糧として問題解決力を養い,生きる強さを身 につけていると言つてもよい 。問題にぶつかれば ,現在の方法をかえたり,新 たな解決方法さがしを迫られたりすることもある。そのときどうするかを,ど のように決めているであろうか。決め方,すなわち意思決定の方法には,より よいものがあることが知 られている。よりよい意思決定では,結果が納得い くものになりやすく後悔が少なくてすみ ,多少結果がわるくても , よく考えた 自分に納得がいく。  衝動買いは ,「こんなに安いのにいま買わないと誰かに買われてしまう」な どと,そのときの感情や気分で決めていることが多い。また,買い占めはいけ ないとわかっていても,実際に行っている人を見たあとに,残りわずかな商品 を見れば,残り全部を買いたくなる感情も生じるかもしれない。よりよい意思 決定は ,そのような一時的な感情ではなく,「情報」に基づいているといわれ る。 「情報」とは  それでは,「情報」とはどのようなものであろうか。たとえば,がんの治療 効果判定に用いられる5年生存率という指標がある (>図 1-1)。 がんと診断さ れた人が ,それから5年後に生存している割合をあらわしたものである。胃が んでは,早期のがんなら100%に近く,進行したがんなら10%前後となってい る。 これは,言うまでもないが,過去におこったことについてのデータ data である。そして,これを未来にあてはめてみると ,期待される確率となる。進 行したがん患者が,このデータを知れば ,5年後までに死亡する確率は90%前 後と予想ができる。そこで,5年以上生きるかもしれないと思いつつも,5年 以内でできることをしておこうと考えるかもしれない。人によっては, 自分は もっと長く生きてみせると長い計画を立てるかもしれない。このデータをどう いかすかは,人それぞれである。  そもそも,人間にはさまざまな人がいる。人々におこる未来のできごとは, 不確実なものである。 こうすれば必ずこうなると ,100%保証されているもの は少ない。それでももし,おこる確率についての情報が手に入るのであれば, それをもとに予想してみたいと考えるものである。そのため,「情報」とは, それが持つ役割から,「不確実性を減らすもの」ともいわれる。