有限単純群(Finite Simple Groups)


理学部2号館(理学系共同研究棟) の1階の展示 「サイエンス・プロムナード」 に, モンスターの位数 が刻まれています。

808,017,424,794,512,875,886,459,904,961,710,757,005,754,368,000,000,000

 これは,散在型単純群モンスターの位数,という値です。

 数学においては,具体的な数字が問題になることは,一般に思われているよりもずっと少ないのですが,それでも,このような具体的かつ巨大な値が重要な意味を持つことがあります。この値は54桁で,宇宙中の粒子の個数に匹敵するとも言われています。

 「モンスターの位数」要するに何かの個数がこの数だというのですが,高校生程度でわかる言葉で言うならば,196,883次の正方行列がこれだけあると考えて下さい。その中の一つは単位行列です。また,この196,883次の行列はどれも逆行列を持ち,逆行列もその中に含まれています。さらに,この中の2つの行列の積も,また,この中に入ります。(つまり,積と逆行列という演算に関して閉じています。このことを,これらは群をなす,と言います。)もう少し,小さい行列で表されれば分かり易いのですが,行列で表すには, この196,883というのが最も小さい値です。

 この行列は,196,883次元のベクトル空間の1次変換を引き起こしています。このベクトル空間にも重要な意味があることが,最近の研究からわかって来ました。この196,883という値も,保型関数論という数学の別の視点から見たときに重要な値だということが知られています。さらに,最初の数を素因数分解した

2^46.3^20.5^9.7^6.11^2.13^3.17.19.23.29.31.41.47.59.71

には,2から71までの素数の全部でなく一部が出てくるのですが,それらも特別なものだけが出てくることがわかっています。このような,数字の出現にどのような理由があるのか,少しずつわかりかけてきていますが,まだまだ謎が多く残っています。謎の解明の途中から,理論物理との関係も明らかになってきています。多くの人々がこの数字に興味を持っているのです。


有限単純群の分類定理

G を有限単純群とすれば,G は下記のいずれかと同型である。

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