教育研究領域 (学部)

代数

数の集合のように、演算を持つ集合の構造を調べることが代数学の入門です。代数学的構造の基礎となる群論から始まり、環論、体論と続きます。体論では、現代数学の始まりともいうべきガロアの理論が目標となります。いくつかの公理から組み立てられる代数系の中に美しさが見つけられると、数学が面白くなるのではないでしょうか。また、加群、ネーター環、ホモロジー代数学など、その後に続く代数研究の基礎となる講義が用意されております。4年次のゼミナールでは、さらに進んだ代数学の諸理論、整数論、多元環や群の表現などについで研究することになります。数学・情報数理学科のワークステーションには、群や体の計算をするCAYLEYとGAPという名前の2つのソフトウェアーがあり、手計算ではなかなか大変な複雑な群などの計算をやってみることもできます。

みなさんどなたも難問を解いたときの喜びを味わった経験をおもちでしよう。もしその難問を世界中で最初に解いた人があなただったとしたら、もっとワクワクしませんか。創造と発見、それが数学の本質と思います。

幾何

皆さんは「幾何学」と聞いてどのようなものを想像されるでしょうか。「ユークリッド幾何」でしょうか。それとも「四色問題」でしょうか。なるほど、確かにそれらも幾何学ですが、現代の幾何学はもっと多岐にわたります。例えば、整数論における有名な「フェルマー予想」も幾何学の範ちゅうに入りますし、ホーキングスの宇宙論も幾何学の言葉を用いて述ベられます。また、物理学における「非可換ゲージ理論」が4次元の幾何学に革命をもたらしたなどといったら皆さんはどう思うでしょうか。このようなことを言っていると、恐れを覚えるかもしれませんが、その根底に流れるアイデアは極めて素朴です。例えば、高校で学んできた「関数の最大値、最小値を求める方法」の考えは、上に述べた「4次元幾何学の革命」に本質的に用いられます。

本教育研究領域では、このような問題を考えるための基礎を学びます。具体的には、位相幾何学、微分幾何学(曲面論)、大城解析学、代数幾何学などです。補助線をうまく引けたときの喜び、またそれにより新たに広がる視野など幾何学の面白さはさまざまですが、皆さんも自分なりの面白さを感じられるようになればしめたものです。

基礎解析

解析学というのは英語では「Analysis」といいますが、微分積分の延長にある分野です。Analysisを辞書で引いてみると、まず「分析」という訳が出ています。では、数学では何を分析するのでしょう。関数を分析するのです。大胆に言えば微分と積分を主な道具として関数を分析するのが解析学です。

さてニュートンとライブニッツによる微分法の発見以来、数学や物理学を始めとした科学は大きな発展をしてきました。微分法によって人は「動くもの」を的確にとらえることができるようになった、と言えます。例えば多くの物理的な現象は関数とその導関数を含む方程式、「微分方程式」で表されます。このような微分方程式は複素数の範囲で考えるとより見通しのよいものになります。ところで「関数」は数に数を対応させるもの、ということですが、実はこのような意味での関数の中には入らないような「関数」も必要になります。関数の一般化という意味で「超関数」と言います。代数学や幾何学とともに古くから確立された解析学ですが、いろいろな新しい考え方、見方が発展して、そこにはとてもカッコイイ概念の世界が開けています。

応用解析

解析学とは数学の中でもとくに極限概念を基礎とした分野である、といえるでしょう。みなさんが高校で教わって来られた微分積分学は(数学全体の基礎ですが、特に)解析学の一番の基礎であり、解析学の入口です。極限というのは決して分かりやすい概念ではありませんが、有限な存在である人間が無限を積極的に捉えようとした見事な例と みることができるでしょう。

この教育研究領域では、高校では少々あやふやに扱われて来た極限の概念を見直して、しっかりした理論づけの上に立って議論を進め、さらにそのいろいろな応用をも研究します。理論を発展させさらに応用もして行くためには、基盤がしっかりしていなければならないからです。この教育研究領域で扱われる項目を挙げてみると、複素解析学、線形及び非線形の函数解析学、作用素環の理論、微分方程式・積分方程式・差分方程式・偏微分方程式論など函数方程式の理論などです。さらに計算理論や、それらの社会科学および自然科学その他への応用などもあります。

数学の対象とする範囲は非常に広くまた深いものです。一見した所では何の関係もなさそうなものの間に思いがけない結びつきが発見され、これまでとは異なる新しい展開を示すことが少なくありません。数学の美しさの面白さは、そのような所にあるのでしよう。

確率・統計

数理統計学、統計的因果推論、計画数学、最適化理論、確率論、確率過程論など について、研究や教育を行なっています。ゼミナールでは、数理統計学及び確率論の基本的な勉学をもとに、現実の問題を数学的にとらえることを学びます。実際の物理現象、社会現象などから数学を抽出し、そのモデルを解析することを学びます。さらに、人間の決定様式などを含んだ最適化理論を勉強することもあります。

本教育研究領域の扱うもので大切なものは「確率変数」の理解です。実際、未来の出来事を調査・観測するとき、完全に調べあげることはできませんから、そのものがある範囲内に入る確からしさしか分かりません。完全に規定するには情報が不足しています。この考えを数学で扱えるようにしたものの一つが確率変数です。また、本教育研究領域の目指す所は、「理論と応用のバランスのとれた研究」です。すなわち、理論的な研究を行なう場合、その背景としての現実の問題を確認しておくこと、また逆に応用的な研究を行なう場合、理論で得られた成果の適用範囲をはっきり捉らえておくことが極めて大切と考えています。

高校で修得した事柄をもとに、大学で勉強する数学の知識を活用し、統計・確率・情報の多方面にわたる知識を身につけ、真に「確率変数」を理解されることを期待します。

情報数理

この学科の情報数理学コースは、平成6年度に作られました。急速に進歩しつつある今日の情報化社会では、時代の変化に対応できる柔軟な幅広い思考力と、時代を越えて必要な数理的論理性を兼ね備えた人材の出現が待ち望まれています。そこで私たちは、現在の日本で特に不足している、情報科学の数理的側面を理解できる人材の育成を目指して、このコースを作った訳です。この目的のためには、数学の考え方と基礎的知識を完全に修得しておくことが不可欠です。本学科に入学すると、3年生になって情報数理学コース、数学コースのどちらに進学するにしても、1・2年生の時は同じ専門科目を履修するのは、このためです。このシステムは情報数理学と数学の双方の発展にとって、きっと良い結果を生むものと私たちは確信しています。

情報数理学教育研究領域には、情報科学基礎論、計算機数理学、情報基礎数理学の3つの研究分野があります。これらはいずれもコンピュータや情報通信に関連した研究分野であり、これらをハードウエアとソフトウェアに分けると、ソフトウェアに関連しています。と言うと、「ソフトウェアの使い方を覚えるだけじゃないの」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。この教育研究領域でのソフトウェアとの係わりは、あくまで数学的な視点からのものです。すなわちこれらの3研究分野では、情報科学に関連する種々の数理科学的方法の教育・研究を行います。もちろんコンピュータ自体を対象とする計算機科学に特に深い係わりがあるのですが、興味の対象はやはりその数理科学的側面にあるわけです。例えば、情報を符号化したり暗号化したりする際には、代数構造の知識や確率・統計的処理、更には計算機理論などが必須となります。このように情報科学に必須の代数的思考法や確率的思考法などの習得も大きな目的の1つです。

今日の高校生だと計算機のプログラムを書いたことがある人も少なくないでしようが、プログラム自体が数や図形のような数学的対象であることに気付いた人は、おそらくあまりいないでしよう。たとえば、プログラムの理論という分野ではプログラムの数学的構造を明らかにし、プログラムが自分の意図通りに動くことを証明するにはどうすればよいか、などといったことを考えていきます。このような学習を通じてきっとプログラムに関して新しい見方ができるはずです。その喜びを十分に味わって下さることを期待します。